大阪大学大学院工学研究科
生命先端工学専攻

物質生命工学コース
レーザー分光領域

兼松研究室

Kanematsu Laboratory

10 -12 秒間に起こる物質のダイナミクスを操るための光技術
― 超高速レーザー分光・制御技術の開発

光を極限まで操る

今日、光の様々な性質を用いて、物質の構造や性質を測定することが可能になっています。さらに光を極限まで制御することで、従来困難であった光学計測を開発したり、プロセス産業での製造工程を高効率に制御したりすることが可能になります。私たちの研究室では、広い波長範囲において光の生成・制御を行い、あらたな光学領域の開拓を目指しています。

生体などの複雑系ダイナミクスを追跡し、応用する

蛋白質など生体高分子は、それ自体が複雑なシステムですが、生体内では分子どうしの協調的な働きによって、統合された機能を実現しています。これらの複雑な動態を分光学的な手段で追いかけ、解明を目指します。また、光受容蛋白質など、光を刺激として機能発現する生体システムの理解と、分子デバイスとしての応用を目指しています。

新たな分光法とシステムを開発する

先端レーザー装置開発は、実際に使われるところを想定しなければ用をなしません。実際に使用する対象を理解して、独創的な実用手法・システムを提案、開発するために、私たちは、広く分野を超えて融合型共同研究を推進しています。技術系ベンチャーの萌芽となるような研究を意識的に追求しています。

光活性黄色タンパク質分子

超高速コヒーレント振動運動

室温下での水溶液中において、タンパク質の自然放出蛍光のコヒーレント振動の様子が観測されています。このような振動は、これまで、同条件下で他の色素溶液では捉えられていません。そこで私たちは、「なぜこの条件下で、自然放出発光強度が振動するのか」という疑問を軸にとり上げ、電子的励起状態における波束の動態を直接観察するため、optical Kerr gate 法を用いて光受容蛋白質(PYP)の時間・波長分解蛍光スペクトル検出をおこないました。

ZnO 薄膜における励起子
励起子
散乱発光の時間分解発光特性

ZnO は、室温で3.37eV のバンドギャップエネルギーを持つ直接遷移型半導体のワイドギャップ半導体です。また励起子束縛エネルギーが60meVと、他の半導体に比べて非常に大きく、室温でも励起子が安定して存在できます。これらより、励起子物性において非常に興味深い紫外域での光エレクトロニクスデバイス材料です。本研究では、励起子-励起子散乱発光ダイナミクスにおいて、特に発光減衰時間と薄膜の関係性に着目しています。